“第4回フェローシッププログラム開催!”
2025年6月7日、第4回GreenFaith Japanフェローシッププログラムを開催いたしました。
今回は自然エネルギー財団 上級研究員の大久保ゆり氏をお招きし、「気候危機への問題意識と日本の自然エネルギー拡大の可能性」をテーマに講義いただきました。講義を通じて、自然エネルギーの導入がもたらす環境面・経済面での可能性、そして地域や信仰の力を活かした取り組みの重要性を学びました。「自然と宗教は本質的に深くつながっている」という視点は、私たちの活動の根幹を見つめ直すきっかけにもなりました。
“気候危機の影響と対策の緊急性”
日本では、企業や自治体、宗教団体など多様な団体が、脱炭素社会の実現に向けて気候変動対策に取り組んでいます。しかし現実の社会には、大量生産・大量消費・大量廃棄の構造がいまだに残っており、それが環境破壊や格差の拡大にもつながっています。気候危機を乗り越えるには、この構造を見直し、エネルギー源の転換を進めることが不可欠とのことです。また、気候変動の影響と考えられる災害として、大久保さんの地元・大阪での台風被害や関西空港の連絡橋事故をはじめ、世界各地で発生している台風、山火事、河川の水位低下といった事例も紹介されました。
“自然エネルギーの疑問”
「自然エネルギーは不安定で高コスト」といった疑問に対し、大久保さんは現状と将来の展望の両面から説明をされました。脱炭素対策は緊急の課題であり、気温上昇を1.5℃以内に抑えるにはCO2排出量の大幅な削減が必要です。現在の排出ペースでは、残されたカーボンバジェット(炭素予算)は10年弱で尽きるとのことです。日本では石炭火力への依存が続き、自然エネルギーの普及率はまだ低いものの、技術の進展により安定供給は十分可能とされています。天気予測や蓄電、送電網の整備により、不安定さは解消されつつあります。海外ではブラジル、スウェーデン、デンマークなどが先進国とされ、日本でも自然エネルギーの電力を蓄えるために必要なバッテリーコストの低下や太陽光発電設備の価格下落が進んでいるという前向きな変化も紹介されました。
“日本での自然エネルギー拡大の可能性”
「自然エネルギーは本当に化石燃料や原発の代わりになるのか?」という問いに対して、大久保さんからは、「代わりになり得る」という明確な回答がありました。自然エネルギー財団が示すシナリオでは、2030年には日本の発電の80%、2040年には90%以上を自然エネルギーでまかなうことが可能だとされています。さらに、2035年には導入量が現在の約3倍に達するという予測も示されており、現実的な道筋が描かれています。また、自然エネルギーの普及は経済面でも大きな可能性を持っており、新たな事業参入や地域経済の活性化につながると考えられています。土地利用についても、住宅地だけでなく農地や未利用地の活用が視野に入るべきだという提案がありました。こうした話から、日本でも自然エネルギーは「補完的な手段」ではなく、持続可能な社会を支える主要なエネルギー源として本格的に拡大していけるという希望が感じられました。
“排出削減と地域貢献の事例紹介”
講義では、千葉県匝瑳市と岐阜県可児市の地域に根ざした自然エネルギーの事例が紹介されました。
匝瑳市では、高さ2.7mの太陽光パネルを設置したソーラーシェアリングが行われており、農地を活用した大型の営農型太陽光発電として、パネルの日陰を利用しながら農産物の育成も行われています。また、可児市の大森奥山湿地群では、湿地の保護を目的とした環境配慮型の太陽光発電設備が設置されており、市民団体と事業者、自治体が連携して進めた取り組みとして紹介されました。一方、可児市の大森奥山湿地群では、湿地の保護と共存する形で太陽光発電設備が設置されました。このプロジェクトは、自治体、市民団体、事業者の三者が連携して実現したもので、環境への配慮と地域の協働による新しいエネルギー導入の形を示しています。これらの事例からは、自然エネルギーが単なる電力供給手段ではなく、地域資源を活かし、環境保全と経済的な持続可能性を両立させる力を持っていることが実感されました。
最後に、大久保先生は「宗教と自然は深い関わりがあり、自然エネルギーの活用については宗教界から理解が得られやすいのではないか」とのお考えを示されました。
地球への畏敬の念を抱き、格差のない社会を目指し、命の大切さと未来への希望をもって行動することに、宗教界への大きな期待が込められていることが伝わってきました。
私たちGreenFaith Japanも次世代のために、宗教者・信仰者として声を上げ、地域や社会と連携しながら、持続可能な未来に向けた具体的な一歩を踏み出していきたいと思います。