第5回フェローシッププログラム開催!
2025年7月19日、第5回フェローシッププログラムを開催いたしました。
今回は、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン) 自然保護室 気候・エネルギー・非国家アクター連携担当の田中健氏をお迎えし、「パリ協定の実現に取り組む世界諸団体と非国家アクター」というテーマでご講義いただきました。気候変動は今や世界全体の課題となっており、その解決には政府だけでなく、企業や自治体、市民、宗教団体などの「非国家アクター」が重要な役割を果たすことが求められています。今回の講義では、日本の非国家アクターがどのように政府に働きかけ、地球規模の気候課題に向き合っていけるのかを中心に、5つの議題でお話しいただきました。
“気候危機、迫るティッピングポイント”
世界は気温上昇を1.5℃以内に抑えることを目指していますが、すでに平均気温は1.1℃上昇しています。日本ではその上昇率がさらに高く、CO2濃度も上昇の一途をたどっています。その影響で夏の暑さが厳しくなり、熱中症による死亡者も増加。例えば、石垣島では温暖化によりサンゴの白化が進み、ティッピングポイント(生態系の不可逆的な変化点)を超えた場合、回復は困難になるとされます。こうした転換点を回避することが重要だと語られました。
“パリ協定と非国家アクターを導く世界の動向”
1992年の国際条約から2015年のパリ協定までの流れを振り返りつつ、現在は政府の方針だけで気温上昇を1.5℃に抑えることは難しく、非国家アクターとの連携が不可欠であると説明されました。こうした団体の数は年々増加しており、世界中で連携を強化するキャンペーンが展開されています。
“企業を導く団体・イニシアティブ”
企業による誓約から具体的な行動への移行も進んでおり、2024年にはSBT認定企業数で日本が世界1位となりました。環境への取り組みを積極的に情報開示する企業は、国際的な信頼を得るとともに、経済的な発展にもつながると指摘されました。
“声を上げる非国家アクターたち”
非国家アクターの活動には、説得力と整合性が求められます。政府に対するロビー活動やアドボカシーの中で、環境への配慮が企業評価にも影響を与えるようになっています。また、世界の投資家も気候危機への関心を高めており、環境配慮型の産業への投資促進が進む一方、健康被害を訴える声も政府に届けることが重要であると語られました。
日本国内には216の非国家アクターが存在し、CO2削減や再生可能エネルギー導入の目標達成を政府に求める企業グループの活動も紹介されました。さらに、米国の州政府や都市リーダー、ペットケア・健康食品などを手がける企業MARSの先進的なイニシアティブについても触れられました。
“みなさんへの問い”
私たちが脱炭素社会に向けてどう行動すべきかを考えるうえで、日本人には「他者の評価」や「費用への懸念」が行動をためらわせる要因となっていると指摘されました。アジア諸国との比較でも、日本人の気候変動に対する意識は低く、個人の行動にもその傾向が表れているという調査結果も紹介されました。環境問題は政府間の課題にとどまらず、私たち一人ひとりが「非国家アクター」として関わるべき地球規模の危機であるという認識を深める時間となりました。今後もGreenFaith Japanは、企業・団体・個人と連携しながら、持続可能な未来に向けて行動していきます。