第7回フェローシッププログラム開催!
2025年10月4日、第7回フェローシッププログラムを開催いたしました。今回は、宗像大社(福岡県宗像市)宮司の葦津敬之氏をお迎えし、「宗像国際環境会議の歩み」というテーマでご講義いただきました。
“宗像大社の歴史と信仰に触れて”
はじめに、宗像大社の歴史や信仰の背景についてお話がありました。宗像大社は、日本神話にも登場する由緒ある神社で、天照大御神の三女神(田心姫神・湍津姫神・市杵島姫神)を祀っています。それぞれが沖ノ島・大島・本土にある三宮に祀られ、この三宮を総称して「宗像大社」と呼ばれています。古代から海を通じた外交や祭祀が行われており、朝廷とのつながりも深く、長い歴史の中で海洋信仰を支えてきた存在であることが紹介されました。
“世界文化遺産への取り組み”
お話の中では、2017年に「神宿る島 宗像・沖ノ島と関連遺産群」がユネスコの世界文化遺産に登録されるまでの道のりにも触れられました。
単なる地域遺産としてではなく、信仰・自然・文化のつながりを世界に伝えるため、“SEA(Spiritual=信仰、Ecology=環境、Animism=アニミズム)”という視点をもとに推薦書を構成し、宗像の文化的・精神的価値を丁寧に表現されたそうです。特に、古代東アジアの対外交流期に発展した「沖ノ島信仰」が、現代まで生きた伝統として受け継がれていること、そしてそれを裏付ける物的証拠が存在することが評価され、世界遺産登録に至ったと語られていました。
“宗像国際環境会議の歩みと実践”
今回の講義の中心は、「宗像国際環境会議」の取り組みについてでした。宗像大社は海に面し、古くから海洋信仰の拠点として地域と深く関わってきた神社です。しかし近年では、海水温の上昇や沿岸への漂着ごみ、磯焼け(海藻が減少し生態系が崩れる現象)など、海の環境が急激に変化しており、深刻な課題に直面しているといいます。こうした状況を受けて、2014年に宗像国際環境会議が設立されました。「海の鎮守の森」構想を掲げ、海の再生や環境への提言を進めるとともに、地域内外に向けた発信を続けてきたそうです。
主な取り組みは以下の通りです:
• 宗像国際環境会議の年1回開催(第12回は2025年10月末に開催予定)
• 海の再生活動(竹漁礁づくり、海岸清掃)
• 地元高校生の育成プログラム
• 稚魚放流や豊饒祭などの伝統行事を通じた自然とのつながりの再確認
• 環境意識を高める啓発・情報発信活動
これらの活動は、宗像大社だけでなく、宗像市、宗像観光協会、地域団体、大学・高校、地元企業などが参加する実行委員会によって運営されています。宗教・教育・行政・民間が一体となった地域ぐるみの取り組みである点も大きな特徴です。
“信仰と自然、実践から学ぶ”
信仰に基づく価値観を土台にしながら、科学的な視点や実践的な行動を重ねる宗像の取り組みには、GreenFaith Japanとしても多くの学びがありました。海の変化に向き合い、文化と環境の両面から未来を守ろうとする姿勢は、信仰と社会をつなぐ新たな役割や可能性を考えるうえでも、大きな示唆を与えてくれました。自然とともに生きるという感覚、神聖なものとして自然を尊ぶまなざしは、宗教・地域を超えて共有できる価値です。私たちGreenFaith Japanも、10月末に開催される宗像国際環境会議に参加を予定しています。
国内外の多様な声と出会い、信仰に根ざした環境行動をさらに深めていく機会にできればと考えています。